残業対策

残業問題

労働基準法では、時間外労働に対して割増賃金を支払うことを使用者に義務づけています。名称は残業手当、時間外手当と様々ですが、ダラダラと残業をされて手当を請求されている企業様も少なくないようです。(以下、「残業代」と呼びます)
ここでは、残業代に伴う基礎知識と残業代を請求されないための対処法を説明します。不当に残業代を請求されないための方法は多種多様にあります。一つずつしっかり理解し、実行するようにしましょう。

残業をめぐる環境の変化

現在、ダラダラと残業をされて、残業代を請求されるというケースが増加しています。ではそもそもなぜ残業をされては困るのかということを解説していきます。残業に対して対応を考えなければならない理由は、以下の4つです。

1労災認定時に在社時間の長短で過重労働性判断

これはつまり、残業をすることによって労災のリスクが生じるというものです。企業は以下のことをしっかり考えなければなりません。

  • 労働者に対する安全配慮義務
  • 過労死認定基準の改正と時間外労働時間数の認定方法
  • 労災事案に伴う労働基準法上の労働時間概念の揺らぎ
2労働基準監督署行政が労働時間関係の指導強化

これはつまり、残業をさせることによって、労基署から厳しい行政指導の可能性があるということです。
労働基準監督署については、こちらを参照ください

3未払残業代請求に係る裁判例の動向
これは、近年の裁判の判例からすると、ホワイトカラー労働者の時間外労働についても、「黙示の業務指示」ということで、「労働時間性」が認められる可能性が極めて高まったということです。
また、これは、企業側から明示の指示が認められない場合でも時間外労働の労働時間性は認められるのです。
4改正労働基準法における割増賃金引き上げと「60時間の壁」

これは、特別割増による人件費コスト増への対応として、残業時間管理が必要になります。

上記4つのように残業をめぐる企業にとって課題となりつつあります。企業として、残業を放置するということは、大きな法的リスクを負うことと同じことだと言えます。企業にとっては、ダラダラ残業をなくすことやダラダラ残業がそもそも生じないための労働時間管理を行うことが必要になってきています。

改正労働基準法について

平成22年4月1日より、一定の法廷時間外労働に対する賃金の割増率の引き上げ等を定める改正労働基準法が施行されています。
その主な改正内容は(1)割増率の引き上げ、(2)限度基準に定める事項の追加、(3)代休の取得による特別割増の免除、(4)年次有休休暇制度の新設です。

1割増率の引き上げ

「割増賃金について」で説明しますので、そちらをご覧下さい。

2限度基準に定める事項の追加

「時間外労働の限度基準」(平成10年労働省告示第154号:限度基準告示)により、1ヶ月に45時間を超えて時間外労働を行う場合には、あらかじめ労使で特別条項付きの時間外労働協定(通称「36協定」)を締結する必要がありましたが、

  • 特別条項付きの時間外労働協定では、月45時間を超える時間外労働に対する割増賃金率も定めること
  • 上記の率は法定割増賃金率(25%)を超える率とするように努めること
  • 月45時間を超える時間外労働をできる限り短縮するように努めること

という3点が盛り込まれました。
なお、上記の限度基準告示は、改正法の施行までに、あらためて改正される予定です

3代休の取得による特別割増の免除
労働者が休暇を取得した場合には、その取得した休暇に対応する労働時間については特別割増が不要となるというものです。
代休として与えることができる時間の時間数は以下のようになっています。
4年次有休休暇制度の新設
現行では、年次有給休暇は1日単位で取得することとされていますが、事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として時間単位で取得できるようになります。
これは、所定労働日数が少ないパートタイム労働者の方なども、事業場で労使協定を締結すれば、時間単位で取得できるようになります。
なお、1日分の年次有給休暇が何時間分の年次有給休暇に当たるかは、労働者の所定労働時間をもとに決めることになりますが、詳細は改正法の施行までに厚生労働省令で定められます。
年次有給休暇を日単位で取得するか、時間単位で取得するかは、労働者が自由に選択することができます。例えば、労働者が1日単位で取得することを希望した場合に、使用者が時間単位に変更することはできません。 今回の改正により、さらに細かい労務管理が求められるようになります。
(※年次有給休暇関連の改正は、労使協定を締結すればの話です)

割増賃金について

改正労働基準法により、1ヶ月につき法定労働時間を60時間超えて労働させた場合、その超えた時間の労働に対する割増率が50%以上に設定されることになりました。つまり、法定割増賃金率が25%から50%へ引き上げられます。現行と改正後の比較を以下に示します。

残業をなくす施策

1残業事前承認制の導入

よく見かける光景ですが、上司から残業命令もないにも拘らず、ダラダラ残業を続ける社員を止めるための施策です。これを導入するのは、簡単ですが、かなり効果がありますので、是非導入していただければと思います。就業規則では、「上司の許可を得ない時間外労働または休日労働は、これを労働時間と取り扱わない」という旨の規定をもうけます。ただ、このように万全に対策したからといって、課題はあります。 規定があっても、無許可の残業があった場合に残業代を払わずにいると、賃金不払いとされるリスクがあります。これは残業命令を行わなくても、「黙示の残業命令」があったとし、残業代の支払いを命じる場合が多い為です。事前の申請・承認のない残業は行わせない運用をすることが必要となります。そのためには、

  • 労働時間数の把握
  • 職場風土の見直し
  • 懲戒ルールの策定

などが必要になります。
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また、「残業代を払いすぎているではないか?」と疑問をお持ちの経営者様は、「残業代半減簡診断」もありますので、お気軽にご活用下さい。

2労働時間数の適正把握

この労働時間数を適正に把握しようとする場合、原則、各人で労働時間を把握してもらうという「自己申告制」が良いと考えられます。 ただし、自己申告制の場合、タイムカードなどの客観的方法による労働時間管理と異なり、各人の認識のずれによりばらつきが生じる可能性も多分にしてあります。そこで、自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置として以下のものが挙げられます。

  • 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うなどについて十分な説明を行うこと
  • 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること
  • 労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。

また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の低額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因になっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること

3残業禁止命令

(1)残業事前承認制の導入,(2)労働時間数の適正把握の2つを行ってもダラダラ残業がなくならないケースもあります。そういった場合は、遵守事項を規定して対応することが考えられます。特に最近のダラダラ「在社」においてネットサーフィンを行う社員が増えてきておりますので、それについても就業規則で規定をすることが望ましいでしょう。

また、ダラダラ「在社」に対する明確な規定にもかかわらず、なおそれを続ける社員に対しては、残業の禁止命令をすることが、企業のリスク管理上有益です。

在社の禁止(例)

第●条 会社は、前条各号に違反した社員に対して、所定労働時間外・休日の在社を禁止する。
2 会社は、前条各号に違反する在社を認めた場合、所定時間内外含め、これに対応した時間分の賃金を支給しない。

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